横国理系数学の出題傾向と対策
横浜国立大学・理系・2019〜2026年度の分析
形式は8年間ほぼ不変
対象は理工学部および都市科学部(建築・都市基盤・環境リスク共生)の 前期日程である。試験時間150分,大問5題,完全記述式。 個別学力検査は英語300点・数学450点・理科450点の計1200点で, 数学の配点は450点——すなわち1題あたり90点にあたる。
解答用紙は3枚(A6--1 〜 A6--3)で,大問番号と一致する欄に書き込む。 名古屋大学などと違い,横国の試験では数学公式集は配布されない。 必要な公式はすべて自分で用意しておく必要がある。
2021年度(令和3年度)は個別学力検査そのものが実施されていない
過去問演習を始める前に,1点だけ知っておくべきことがある。 2021年度入試には,横浜国立大学の数学の試験問題が存在しない。
横浜国立大学は2020年7月31日,新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から, 令和3年度(2021年度)一般選抜の個別学力検査(いわゆる二次試験)を実施しないことを公表した。 前期日程・後期日程あわせて例年7,500人を超える出願があり, そのうち5,000人ほどが神奈川県外からの出願であるため, 個別学力検査の実施が受験生に県域を越える移動を強いることになる,というのが理由である。 選抜は大学入学共通テストの成績・調査書・自己推薦書によって行われた (教育学部でも,予定していた面接・小論文・実技検査に代えて,動画やレポートなどの提出物で判定された)。 国立大学で二次試験の全面的な取りやめを最初に決めたのが横浜国立大学であり,当時大きく報じられた。
したがって,赤本や過去問データベースで「2021年度」だけが欠けているのは誤植ではない。 2019・2020年度と2022年度以降は通常どおり出題されている。
8年分の出題一覧
| 年度 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2019 | 三角形と分点・区分求積の極限 | 正四面体と平面・直線の交点 | さいころ回と大きい順の並べ方 | 線分の通過領域の図示・面積 | 三角関数と指数の回転体 |
| 2020 | 増減とグラフ・対数を含む定積分 | 複素数の実部虚部と整数解 | 玉の移動と条件付き確率 | 空間の直線と回転体の体積 | 積分の評価・漸化式・極限 |
| 2021 個別学力検査は実施されず(新型コロナウイルス感染症のため。1.2 参照) | |||||
| 2022 | 指数と三角関数の定積分・媒介変数曲線の面積 | 格子上を動く点の場合の数 | 一次分数変換の像の図示・整数点の個数 | 正四面体上の三角形の面積の最小 | 対数と三角関数・極値の個数 |
| 2023 | と の囲む面積 | さいころ4回と条件付き確率 | 複素数平面の正三角形・重心 | 平方根を含む漸化式の極限 | 指数関数の評価と級数の小数表示 |
| 2024 | 置換積分・積分方程式 | 正六角形とさいころ・条件付き確率 | 四面体のベクトル・面積・体積 | 一次分数変換の像と通過範囲の図示 | 内接する円の列・不等式評価・小数 |
| 2025 | 増減凹凸のグラフ・対数の定積分の極限 | さいころ3回と単位円上の点・条件付き確率 | 立方体のベクトル・垂直条件・範囲 | と数列の評価 | 放物線の法線の通過領域・面積 |
| 2026 | 微分と部分積分の定積分 | 2つのルーレットと数列の確率 | 空間の平面・球面・直線と範囲の図示 | 複素数の平方根と範囲の図示 | 増減凹凸・接線・面積 |
大問の位置が決まっている
名大や東大と違い,横国は大問の並び順そのものが分野を予告している。 7年35題を並べ直すと,つぎの設計がはっきり見える。
| 大問 | 分野 | 中身 |
|---|---|---|
| 1 | 微分積分の小問集合 | 7年中6年が「次の問いに答えよ」で始まる独立した2問。 定積分の計算と,増減・凹凸のグラフが定番。完答すべき90点。 |
| 2 | 確率・場合の数 | 7年すべて。さいころ・玉・ルーレット。 条件付き確率が7年中4年で出る(2020, 2023, 2024, 2025)。 |
| 3 | 空間ベクトル・空間図形 | 7年中5年(2019, 2022は大問2・4に置かれた年もある)。 内積の計算量が非常に多い。 |
| 4 | 複素数平面 または 数列・極限 | 複素数平面が5回(2020, 2022, 2023, 2024, 2026),数列・極限が2回(2023, 2025)。 |
| 5 | 微分積分の重量級 | 面積・体積・通過領域・不等式評価。ここだけ難度が一段上がる。 |
分野別に数えると
整数問題が出ない——これが横国のいちばん大きな特徴である。 旧帝大の対策書をそのまま使うと整数に時間を割きすぎることになる。 そのぶん数学IIIの計算精度に振り切ってよい。
| 分野 | 7年中 | 特徴 |
|---|---|---|
| 微分積分(定積分・面積・体積・極限・評価) | 16題 | 全体の約 。数学IIIの計算が本体 |
| 確率・場合の数 | 7題 | 毎年ちょうど1題。条件付き確率が主役 |
| 空間ベクトル・空間図形 | 6題 | 毎年ほぼ1題。内積の計算が煩雑 |
| 複素数平面 | 5題 | 図示とセットになることが多い |
| 数列・極限(単独の大問として) | 2題 | 2023, 2025 |
| 整数 | 0〜1題 | ほとんど出ない(2020年の大問2の後半のみ) |
「図示せよ」が多い
7年35題のうち6題が「求め,図示せよ」で終わっている (2019年4,2022年3,2024年4,2025年5,2026年3,2026年4)。 しかも図示だけで終わらず,そのあとに面積や個数を問うのが横国の型である。 図が雑だと次の小問がまるごと落ちる。
難易度は「標準」ではない
「横国は標準問題ばかり」と言われることがあるが, 7年35題を実際に解いて分類すると,その評判は正確でない。
この基準で 2019--2026年度の35題を分類すると,つぎのようになる。
すなわち易しい問題は 題もなく,毎年 題前後が「難」である。 「標準」と言われるのは発想が奇抜でないという意味であって, 分量が軽いという意味ではない。 2024年の大問1のように,置換を 回間違えるだけで20分が消える問題が毎年ある。 「解法がわかる」ことと「時間内に合わせきる」ことの差が,そのまま得点差になる。
目標は450点満点で270点(6割)。 これは標準・やや難の 題を完答し,難の 題で半分に相当する。 難の 題に時間を吸われて,取れる 題の検算を落とすのが最悪の失敗である。 大問1は7年間ずっと独立2問の小問集合で, ここを落とす受験生は合格しないと考えてよい。
| 易 | 教科書の例題そのままで解ける |
|---|---|
| 標準 | 入試の典型問題。手順を知っていれば完答できる |
| やや難 | 手順は見えるが計算が重い,または 箇所だけ工夫が要る |
| 難 | 方針を自分で立てる必要がある。最終小問が明確に重い |
| 年度 | 易 | 標準 | やや難 | 難 | 難に分類した大問 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2019 | 0 | 1 | 3 | 1 | 3(さいころ 回の順序) |
| 2020 | 0 | 0 | 2 | 3 | 1,4,5 |
| 2022 | 0 | 0 | 3 | 2 | 2,3 |
| 2023 | 0 | 2 | 2 | 1 | 5 |
| 2024 | 0 | 1 | 2 | 2 | 4,5 |
| 2025 | 0 | 0 | 3 | 2 | 3,5 |
| 2026 | 0 | 1 | 2 | 2 | 3,4 |
| 計 | 0 | 5 | 17 | 13 |
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