愛媛大数学の出題傾向と対策
愛媛大学・理系・2019〜2026年度の分析
1冊の問題冊子に6題,学部ごとに3題を選ぶ
愛媛大学の前期日程の数学は,全学部共通の1冊の問題冊子に大問6題が並び, 学部・入試区分ごとに解答すべき3題が指定されるという,全国的にも珍しい方式である。 2021年度から2026年度まで6年間この形が続いている (2019年度は9題,2020年度は8題で,そこから選ぶ形だった)。
試験時間は120分(教育学部・農学部は100分),完全記述式。 数学公式集の配布はない。出題範囲は次のとおりで, 1〜3と4〜6で違う。
数学Aの「数学と人間の活動」,数学Bの「統計的な推測」は範囲外である。 ただし「 が自然数のとき は4の倍数であることを証明せよ」(2024年度)のような 倍数・約数の証明は,数学的帰納法や剰余での場合分けとして毎年のように出る。 配点は非公表だが,理学部は数学300点,医学部医学科・工学部・農学部は数学200点である。
| 学部 | 学科等 | 解答する問題 |
|---|---|---|
| 教育学部 | 学校教育教員養成課程 | 123 |
| 理学部 | 理学科(数学受験) | 456 |
| 医学部 | 医学科 | 456 |
| 工学部 | 工学科 理型入試A・デジタル情報人材育成特別プログラム | 456 |
| 工学科 理型入試B・文理型入試 | 123 | |
| 農学部 | 全学科 | 123 |
| 123 | 数学I・数学II・数学A(図形の性質,場合の数と確率)・数学B(数列)・数学C(ベクトル) |
|---|---|
| 456 | 上記に数学IIIと数学C(平面上の曲線と複素数平面)を加えたもの |
6題それぞれに固有の「型」がある
6題は難易度順に並んでいるのではない。大問ごとに出題の型が決まっている。 これが愛媛大の最大の特徴で,ここを知っているかどうかで初動の速さがまるで違う。
5と2が共通であることは毎年観察される。 2025年度は3題すべてが(係数だけ変えて)共通で,2026年度は(1)(2)が共通だった。 4の1〜2箇所が1の小問と同じ問題であることも多い。
| 1 | 小問集合5題。互いに無関係な「求めよ」型が5つ並ぶ。 1題あたり5分。代数・三角比・確率・ベクトル・対数(または数列・整式)から1つずつ。 |
|---|---|
| 2 | 証明・図示が3題。「証明せよ」「示せ」「図示せよ」「大小を調べよ」しか出ない。 倍数の証明,帰納法,不等式の証明,領域の図示が4本柱。 |
| 3 | 誘導つきの大型問題が2題。(i)(ii)(iii)と細かく刻まれる。 2題のうち1題は必ず「放物線・接線・面積」。もう1題は空間ベクトルか数列。 |
| 4 | 空所補充。〜の10箇所に数値を書き入れる。 記述は不要で,答だけが採点される。数III の微分・積分,複素数平面,2次曲線,極限,確率。 |
| 5 | 2の理型版。3題のうち2題は2とまったく同じで, 残り1題が数IIIまたは複素数平面の証明問題に差し替えられる。 |
| 6 | 3の理型版。数IIIの誘導つき大型問題が2題。 (1)は数列・級数・複素数・積分漸化式の融合,(2)は面積・体積・極限。小問は最大6個。 |
年度別の出題一覧(現行形式の6年分)
| 年度 | 1(小問5) | 2(証明3) | 3(大型2) | 4(空所10) | 6(大型2) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2021 | 複素数・加法定理・空間の角・3次関数と面積・確率 | 倍数の証明・領域の図示・絶対値方程式・導関数の定義 | 長方形の面積の最大/漸化式と面積の数列 | 不定積分・部分積分・2曲線の面積・の乗根・集合・確率 | 四面体(内積・垂線・体積の最大) |
| 2022 | 円と直線・解と係数・不定方程式・確率・根号の和 | 帰納法・三角関数の不等式・絶対値関数の最大最小 | 放物線の接線と面積, となる最小の | 三角関数の微分・極限・空間の正三角形・複素数・積分方程式・媒介変数 | 確率とベクトル/無限等比級数と面積 |
| 2023 | 三角比・三角不等式・確率・平面ベクトル・対数の大小 | 円柱の体積の最大・漸化式と6の倍数・ の無理性 | 格子点の個数/放物線の2接線と面積 | 分数関数の接線・無理関数の最大・絶対値つき定積分・面積・確率 | 格子点と極限/単位円の回転とベクトル分解 |
| 2024 | 3次関数の極値・三角方程式・等比数列・確率・虚数解 | 帰納法(4の倍数)・相加相乗と対数・領域と円 | 空間ベクトルと面積の最小/放物線の接線と面積の大小 | 複素数の偏角・楕円の接線・定積分・級数と広義積分・確率 | 回転する点列と無限級数/ の平行移動と面積 |
| 2025 | 等差と等比・円に内接する四角形・確率・対数の最大最小・整式の除法 | 整数の証明・和積公式の証明と大小・3次方程式と領域 | 放物線の2接線と面積/空間ベクトル | 確率・無理関数の微分・定積分2つ・複素数平面・整式の除法 | 積分で定まる関数列と無限級数/ベクトルと漸近線 |
| 2026 | 集合・倍数の個数・確率・空間ベクトル・ | 領域の図示・帰納法と ・対数の大小 | 放物線の接線と面積/台形の面積の最大と数列 | 楕円の接線・媒介変数と速度・確率・定積分・回転体の体積 | の乗根の和/数列と円の接線・ 曲線の面積 |
分野の偏り──6年間で一度も休まない5分野
| 分野 | 6年中 | どこに出るか |
|---|---|---|
| 微分積分(数II:接線と面積) | 6 | 3に必ず1題。放物線の接線で囲む面積 |
| 数IIIの微分積分(極限・面積・体積) | 6 | 4と6。理型の主戦場 |
| 確率 | 6 | 1に1題,4に1題(同じ問題のことも) |
| ベクトル(平面・空間) | 6 | 1か3,理型は6にも |
| 数列・漸化式 | 6 | 3または6。極限と組む |
| 倍数・約数の証明 | 5 | 2の(1)がほぼ定位置 |
| 領域の図示 | 5 | 2。不等式を1つ与えて図示させる |
| 数学的帰納法 | 4 | 2。示した式を次の小問で使わせる |
| 複素数平面 | 5 | 4か56 |
| 2次曲線(楕円の接線) | 3 | 4。公式1本で終わる |
難易度──「難問は出ない,しかし時間が足りない」
愛媛大の数学に,発想を要する難問はまず出ない。 誘導が非常に細かく,(i)(ii)(iii)と手順どおりに進めば最後までたどり着ける。 6年間の小問およそ290問を見ても,教科書の章末問題〜標準的な入試問題の水準を超えるものはごくわずかである。
代わりに効いてくるのが分量である。 3や6は小問が6個並ぶことがあり,4は10箇所を埋めなければならない。 3題で25〜30個の小問を120分で処理する計算になり,1問あたり4〜5分しかない。 差がつくのは「解けるかどうか」ではなく「時間内に書ききれるかどうか」である。
したがって対策の軸は次の3つになる。
| 計算の速さ | 接線の方程式,, 部分積分, の公式を,考えずに手が動く状態にする。 |
|---|---|
| 証明の型 | 25は書き方が決まっている。 倍数は剰余で場合分けか帰納法,不等式は差をとって因数分解, 領域は境界の実線・破線まで。型を暗記していれば1題10分で書ける。 |
| 誘導を読む | 36は前小問の結果を必ず次で使う。 (iii)で詰まったら(ii)の答をもう一度見る。独立に解こうとすると計算量が倍になる。 |
目標点
1と4は,1題まるごと「取り切る」ことを前提に設計されている。 ここを8割で終えて他題に時間を回す,という戦い方は愛媛大では成立しない。 小問集合こそ満点を狙うのが正しい。
| 学部 | 目標 | 現実的な取り方 |
|---|---|---|
| 医学部医学科 | 7.5割(225点) | 4を満点近く,56のどちらかを完答 |
| 理学部(数学受験) | 7割(210点) | 4で稼ぎ,5の証明を書ききる |
| 工学部(理型) | 6割(180点) | 4で7割,56の前半小問を確実に |
| 農学部・工学部(文理型) | 6割(180点) | 1を満点近く,23の前半を確実に |
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