東京都立大理系数学の出題傾向と対策
東京都立大学・理系・2019〜2026年度の分析
形式は8年間まったく変わっていない
試験時間75分,大問3題,完全記述式。答案用紙は大問ごとに1枚の計3枚。 問題冊子に配られる公式集はない(名古屋大学などと異なる点なので注意)。 出題範囲は数学I・A・II・B(数列)・III・C(ベクトル,平面上の曲線と複素数平面)である。
配点は非公表である。 実際の持ち点に直すときは,学部の数学満点を150で割った数を掛ければよい。
| 年度 | 大問1 | 大問2 | 大問3 |
|---|---|---|---|
| 2019 | 複素数平面(アポロニウスの円と の像) | 積分漸化式 | 空間ベクトル(平行六面体の体積) |
| 2020 | 対数関数の積分・接線・面積・極限 | 直線に接する円の列と数列 | 確率漸化式(頂点上の生徒の入れかえ) |
| 2021 | 空間ベクトル(四角錐・面積の最小) | 対数関数の微積分(凹凸・面積) | 三角関数(最大最小) |
| 2022 | 三角関数と面積(2曲線・面積の比) | 空間ベクトル(平面と球面) | 3次方程式(2重解の条件) |
| 2023 | 微分(極大の一意性)+漸化式+極限 | 三角関数(合成・3倍角・最大最小) | 空間ベクトル(対称点) |
| 2024 | 微積分(・不等式の評価) | 空間ベクトル(四面体の垂線) | 確率(玉とカード) |
| 2025 | 数列(連立漸化式・対数変換) | 積分漸化式 | 空間図形(直方体・面積の最小) |
| 2026 | 微分(・解の個数) | 積分漸化式と交代級数 | 空間ベクトル(四面体の体積の最大) |
「微分積分」と「空間ベクトル」で3題中2題が埋まる
8年24題を分野で数え直すと,都立大の設計は驚くほどはっきりしている。
(分野が重なる大問は,主題の側で数えた。たとえば 2022年度大問1 は三角関数を素材とするが, 問われているのは面積の計算なので微分積分に,2023年度大問1 は漸化式を含むが 極大値を与える を微分で求めるのが主題なので微分積分に数えている。)
ここから読み取るべきことは3つある。
- 整数問題が8年間1題も出ていない。合同式・不定方程式の対策に時間を使うのは, この試験に限れば効率が悪い。
- 空間ベクトルは実質の必答枠である。内積が数値で与えられる型,座標で与えられる型, 図が添えられる立体の型の3つを,どれも手が止まらないところまで固めておく。
- 積分漸化式( 型)が8年で3回出ている。 と あるいは を結ぶ関係式を作る手つきは, 都立大では単独の頻出テーマとして扱ってよい。
| 分野 | 24題中 | 特徴 |
|---|---|---|
| 微分積分(数III) | 9 | 毎年1〜2題。出ない年はない |
| 空間ベクトル・空間図形 | 7 | 2020年以外は毎年1題。事実上の固定枠 |
| 三角関数 | 2 | 2021, 2023 |
| 数列 | 2 | 2020, 2025 |
| 確率 | 2 | 2020, 2024 |
| 複素数平面 | 1 | 2019 |
| 方程式・式と証明 | 1 | 2022 |
小問の並べ方は4通りしかない
| 型 | 構造と対処 |
|---|---|
| A.道具を作らせてから使わせる | (1)で不定積分・導関数・変形公式を求めさせ,(2)以降でそれを部品として使う。 積分漸化式の大問はすべてこれ。(1)を落とすと以降が全部止まる。 |
| B.文字でおいて1変数に落とす | , のように置きかえ,2次関数か3次関数の最大最小に帰着させる。 置きかえた文字の動く範囲を書き落とすと,そこだけで大きく削られる。 |
| C.空間の定型処理 | 平面の方程式垂線の足面積体積,の順に必ず並ぶ。 最後の小問だけがパラメータの最大最小になる。 |
| D.示しなさい型 | 年により0〜3問(8年で11問)。等式の証明・不等式の評価・「ただ1つ存在する」の証明。 答えが与えられているので,論証の穴がそのまま失点になる。 |
難易度と目標
都立大の理系数学は奇問・難問を出さない。 8年間,発想を要求する問題は数えるほどしかなく, ほとんどの小問は教科書の章末問題と標準的な入試問題集の範囲に収まっている。
ではどこで差がつくのか。75分で3題という時間である。 1題あたり25分しかないのに,小問は3〜4問あり,しかも計算量は決して軽くない。 2026年度の ,2020年度の の列, 2022年度の の最大値——どれも 方針はすぐ立つが,最後まで計算しきる体力がないと点にならない。
もう一段細かく見ると,難易度の設計は小問の位置で決まっている。 8年24題の小問を位置ごとに分類すると次のようになる。
すなわち最終小問だけが一段跳ね上がる構造である。 2024年度 1(3) の , 2026年度 2(3)(4) の交代級数,2025年度 2(3) の が典型で, ここに手が届くかどうかが合否を分ける。
実測すると次のようになる。
すなわち,(1)(2) は本番と同水準に保ちながら, 論証と評価を要求する小問の比率を本番より高くしてある。 第5回だけはさらに一段重く, を二項定理で下からおさえて示す, 逆関数を作ってから積分する,といった本番より深い操作を含めた。
目標は2完+1半(100点前後/150点満点)である。 3題すべての(1)(2)を確実に取るだけで90点に届く。 1題に固執して他題の(1)を落とすのが最悪の失敗であることは, 75分という短さのぶん,名古屋大学などの150分の試験よりもさらに強く効く。
| 位置 | 内容 | 到達率の目安 |
|---|---|---|
| (1) | 定義どおりの計算・具体値・不定積分・成分表示 | |
| (2) | (1) を道具として使う変形,または漸化式・面積の立式 | |
| (3) | 場合分け・最大最小・体積 | |
| (4) | 極限,不等式の評価,「ただ1つ」の証明 |
| 本番(24題・81小問) | |
|---|---|
| 1大問あたりの小問数 | 平均 |
| 「示しなさい」型の小問 | () |
| 「示しなさい」型を含む大問 | () |
| 極限を問う小問を含む大問 | () |
| 最終小問が「示しなさい」または極限 | () |
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