東京都立大 数理科学科数学の出題傾向と対策
東京都立大学・数理科学科・2019〜2026年度の分析
形式は8年間変わっていない
大問3題,完全記述式。答案用紙は大問ごとに1枚の計3枚。 定規とコンパスの使用が認められ(分度器は不可),公式集は配られない。 出題範囲は数学II・III・B(数列)・C(ベクトル,平面上の曲線と複素数平面)が中心である。
配点は非公表である。
| 年度 | 大問1 | 大問2 | 大問3 |
|---|---|---|---|
| 2019 | 三角関数(積和の公式と の方程式) | 単調関数と の積分・数列の収束 | 放物線の接線と法線の本数 |
| 2020 | 陰関数 の最大最小と面積 | 平面図形とベクトルの内積の最小 | 複素数平面( の像と最大最小) |
| 2021 | 不等式 の証明 | 3次方程式の解の実部がすべて負となる条件 | 双曲線と直線・中点・線分の相等 |
| 2022 | の積分による評価と極限 | 複素数平面(回転と三角形の面積の最大最小) | 整数( をみたす の個数) |
| 2023 | 積分方程式() | 複素数平面(一次分数変換 ) | 数列 の整数性と倍数性 |
| 2024 | 整数(ピタゴラス数と を法とする剰余) | 複素数平面(円の極線 ) | の証明(評価と帰納法) |
| 2025 | 放物線と直線で囲む2つの面積の差の最大 | 複素数平面(1の6乗根と数列 ) | 内接円をもつ二等辺三角形と の最小 |
| 2026 | の回転体の体積の最大 | アポロニウスの円・内積・角の二等分 | 複素数平面(直線・・面積の最大) |
「複素数平面」と「微分積分」が骨格である
8年24題を主題で数え直すと,設計ははっきりしている。
ここから読み取るべきことは3つある。
- 複素数平面は必答枠である。2020年度以降,出ていない年がない。 しかも理系共通問題では8年で1回しか出ていないので, 複素数平面の負担はほぼ全部この3題に集まる。ここを空欄で出すのは致命的である。
- 確率・場合の数が8年間1題も出ていない。 空間ベクトル(空間図形)も出ていない。 この2分野は理系共通問題のほうで手当てされている。
- 「示しなさい」が4割近くを占める。 24題78小問のうち30小問(38%)が証明である。 理系共通問題は にすぎないので,これはまったく別の試験だと考えたほうがよい。 しかも年による振れが大きく,2024年度は9小問中8問, 2021年度は11小問中6問が証明であった(逆に2025年度は0問)。
| 分野 | 24題中 | 特徴 |
|---|---|---|
| 微分積分・極限(数III) | 8 | 毎年1題以上。出ない年はない |
| 複素数平面 | 6 | 2020年以降は7年連続で毎年1題。事実上の固定枠 |
| 整数・数列(帰納法) | 4 | 2021, 2022, 2023, 2024 の4年連続 |
| 平面図形・平面上の曲線・ベクトル | 4 | 2020, 2021, 2025, 2026 |
| 三角関数 | 1 | 2019 |
| 方程式・式と証明 | 1 | 2021 |
理系共通問題との違い
同じ大学の同じ日程でありながら,2つの数学は性格がはっきり違う。
同じ対策では通用しない。 理系共通問題の対策で身につくのは「定型処理を速く正確に」であるが, 数理科学科用で問われるのは「与えられた誘導に沿って,穴のない証明を書く」ことである。
| 理系共通問題 | 数理科学科用 | |
|---|---|---|
| 「示しなさい」の割合 | (81小問中11) | (78小問中30) |
| 1大問あたりの小問数 | 平均 | 平均 ((4)まである年が多い) |
| 空間ベクトル | 7題(ほぼ毎年) | 題 |
| 確率 | 2題 | 題 |
| 複素数平面 | 1題 | 6題 |
| 整数 | 題 | 2題 |
| 数学的帰納法 | ほとんど出ない | 2023, 2024 で明示的に要求 |
| 極限・収束の証明 | 数題 | 2019, 2022, 2024 で主題 |
| 問われるもの | 計算を最後まで詰めきる体力 | 論証を組み立てる力 |
誘導の型は4通りしかない
| 型 | 構造と対処 |
|---|---|
| A.道具を作らせてから使わせる | (1)で恒等式・不等式・漸化式を証明させ,(2)以降でそれを部品として使う。 2019①,2022①,2024③がこれ。(1)は必ず取る。 |
| B.具体から一般へ | (1)で の具体値を出させ,(3)(4)で一般の を帰納法で処理させる。 2023③,2024③。(1)の計算で規則を見抜けるかが分かれ目。 |
| C.同値変形の連鎖 | 複素数平面の大問はほぼこれ。 のように,絶対値を共役で書き直す操作を何段か重ねる。 |
| D.評価してはさむ | 不等式で上下からおさえて極限を出す。2019②,2022①,2024③。 評価の向きを間違えると全部崩れる。 |
難易度と目標
数理科学科用の3題は,理系共通問題より明確に難しい。 ただしそれは計算が重いからではなく, 答えが最初から与えられていて,論証だけが評価される小問が多いからである。
難易度の設計は小問の位置で決まっている。 8年24題の小問を位置ごとに分類すると次のようになる。
実測すると次のようになる。
とくに証明小問の比率は本番の に対し で, 1.6倍の密度で論証を要求している。
ただし「難しくするために計算を重くする」ことはしていない。 本番の数理科学科用は8年を通じて計算量そのものは中程度で, 差がつくのは論証の詰めだからである。
目標は1完+2半(80〜90点/150点満点)である。 数理科学科の合格者でも3題完答は多くない。 3題すべての(1)(2)を確実に取るだけで到達できる水準に目標を置き, そのうえで得意な1題を完答しにいくのが正しい戦略である。
- 最終小問を必ず一段上に置いた。
- (1)で作った道具を(4)まで引きずる構成にした。 第1回1では(2)の不等式を(4)で に作り直させ, 第5回2では(1)の2倍角を 回反復させる。 途中で1つ落とすと最後まで届かないという,本番の「型A」を強めたものである。
- 大学数学の入口にあたる結果を結論に置いた。 トレミーの定理,ウィルソンの定理,カタラン数の整数性, 2つの平方数の和の積,オイラー線, への収束—— いずれも本番が好んで置いてきた( の級数, の整数性, 円の極線)のと同じ性格の題材である。
| 位置 | 内容 | 到達率の目安 |
|---|---|---|
| (1) | 定義どおりの計算・具体値・恒等式の確認 | |
| (2) | (1) を道具として使う証明 | |
| (3) | 一般の の証明・図示・最大最小 | |
| (4) | 極限,倍数性,最大値の決定 |
| 本番(24題・78小問) | |
|---|---|
| 1大問あたりの小問数 | 平均 |
| 「示しなさい」型の小問 | () |
| 「示しなさい」型を含む大問 | () |
| 極限を問う小問を含む大問 | () |
| 帰納法を用いる大問 | () |
| 「ただ1つ存在する」の証明 |
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