広大理系数学の出題傾向と対策
広島大学・理系・2019〜2026年度の分析
形式
試験時間150分,大問5題,完全記述式。解答用紙は大問ごとに1枚で,計5枚。 出題範囲は数学 I・II・III・A(図形の性質,場合の数と確率)・B(数列)・C(ベクトル,平面上の曲線と複素数平面)である。
ここで,名古屋大学・大阪大学などとの決定的な違いを2つ挙げておく。
配点は非公表である。
| 年度 | 大問1 | 大問2 | 大問3 | 大問4 | 大問5 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2019 | 等比数列と対数(等差の証明) | 確率(カードと座標平面の点) | 積分方程式・解の一意性・面積の比較 | 複素数平面( 型の像) | 平面図形(垂心・内心・内接円) |
| 2020 | 三角比と図形の計量(面積の最大) | 複素数平面(1次分数変換) | 微積分( の接線と面積) | 定積分()と回転体 | 確率(さいころと硬貨・条件付き) |
| 2021 | 3次関数の極値と絶対値の不等式 | 放物線上の点と正方形 | 確率(さいころ3回・2次方程式) | 2次方程式と整数 | 選択(法線と回転体/内接円と軌跡) |
| 2022 | 3次曲線と直線・面積 | 二等辺三角形の内接円と五心 | 整数の数列と数学的帰納法 | 確率(玉の移動・条件付き) | 指数関数の大小・接線・数列の極限 |
| 2023 | 確率(4回の試行と番号の種類) | 対称点と交点・垂直条件 | 空間ベクトル(正八面体) | 数列(対数変換・等比・極限) | 微積分(グラフ・解の個数・定積分) |
| 2024 | データの分析(分散・相関係数) | 空間ベクトル(垂線の足・面積) | 整数(格子点の個数) | 複素数平面(円と ) | 微積分(凸性・不等式・ の評価) |
| 2025 | 微積分( と回転体) | 点列の漸化式と不等式 | 三角関数と極限(面積比) | 確率(箱とカード・条件付き・極限) | 複素数平面(漸化式・極形式) |
| 2026 | 確率(最大値・条件付き・期待値) | 楕円と直線(弦と面積) | 空間ベクトル(等面四面体) | 微積分(最大値・不定積分・極限) | 数列と極限() |
2025年度から出題範囲が変わった
この表を読むうえで,2025年度を境に線を引かなければならない。 新課程への移行により,「整数の性質」が数学Aから外れたからである。 2019--2024年度には整数問題が3回(2021, 2022, 2024)出ているが, 2025・2026年度には 題もない。同様に「データの分析」も 2024年度に1度出たきりである。
整数の性質を主題とする問題は 題も置いていない。
| もう出ない | 合同式・約数の個数・不定方程式・素因数分解といった整数の性質そのものを 主題にする問題。ただし「数列の項が整数であることを示せ」「格子点の個数を求めよ」 のように,数列や場合の数の枠で整数を扱うのは今後も出る(2024〔3〕・2026〔5〕がその形である)。 |
|---|---|
| 増える | 数学Cの平面上の曲線(2次曲線)。2026年度に楕円が出た。 数Cの比重が上がったぶん,複素数平面・ベクトルと合わせて数Cから2題という年が 今後は標準になると見てよい。 |
分野は「微積分・確率」の二本柱+三つの回転枠
8年40題を分野別に数え直すと,広大の設計がはっきり見える。
読み方はこうである。微積分と確率で2題は確実に埋まる。 残る3枠を,数列・複素数平面・空間ベクトル・2次曲線・図形が持ち回りで埋めている。 どれか1分野を捨てると,5題中1題が丸ごと消える計算になる。
| 分野 | 8年40題中 | 特徴 |
|---|---|---|
| 微分積分(数III が中心) | 12 | 出なかった年は一度もない。毎年1〜2題。 不定積分・置換積分・面積・回転体の体積が定番 |
| 確率・場合の数 | 7 | 出ないのは2024のみ。条件付き確率が6回で,異常なほど好まれる |
| 図形(三角比・図形の性質・図形と方程式) | 5 | 2019--2023に毎年1題。2024以降は途切れている |
| 数列・極限 | 4 | 2019, 2023, 2025, 2026。最後は必ず極限 |
| 複素数平面 | 4 | 2019, 2020, 2024, 2025。像の図示か漸化式の2択 |
| 空間ベクトル | 3 | 2023, 2024, 2026 と3年連続。垂線の足と体積 |
| 整数 | 3 | 2021, 2022, 2024(新課程では範囲外) |
| 平面上の曲線(2次曲線) | 1 | 2026(新課程で比重が上がり,今後は増える見込み) |
| データの分析 | 1 | 2024のみ |
小問の並べ方は3通りしかない
広大の大問は(1)〜(4) の4小問が標準形である((3)止まり・(5)まである年もある)。 そして並べ方は次の3つに尽きる。
| 型 | 構造と対処 |
|---|---|
| A.道具づくり型 | (1)(2)で内積・不定積分・漸化式など道具を作らせ,(3)(4)でそれを組み立てる。 広大でいちばん多い。(1)を落とすと以降が全滅するので, (1)は検算してから次に進む。 |
| B.確率の連鎖型 | (1)基本の確率 (2)条件付き確率 (3)期待値 (4)極限,という連鎖。 条件付き確率の分母をどの事象にとるかだけで勝負が決まる。 |
| C.評価してから極限型 | (3)で不等式を「示せ」,(4)でその不等式を使ってはさみうちに持ち込む。 (3)が解けなくても(4)は(3)を認めて書ける——ここを捨てるのは大損である。 |
難易度と目標
広大理系数学は「難問は出ないが,時間内に5題は終わらない」という設計である。 個々の設問は教科書の章末問題〜標準的な入試問題の水準で, 名大・阪大のような発想の飛躍を要求してこない。 そのかわり計算量が多く,1題を丁寧に書くと30分では収まらない。
目標は医学部医学科で4完(120点前後),その他学部で3完+2半(100点前後)。 言いかえれば,5題のうち1題は最初から捨てる前提で組み立てるのが正しい戦略である。 開始10分でどの1題を捨てるかを決めること。これが広大対策の第一歩である。
なお,8年間の小問およそ160問のうち約3割が「示せ」型である。 答えが合っているかどうかではなく,論証を書ききれるかが測られる設問が 毎年5問前後あることになる。
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