東北大文系数学の出題傾向と対策
東北大学・文系・2019〜2026年度の分析
形式は8年間不変
試験時間100分,大問4題,完全記述式。 対象は文学部・教育学部・法学部・経済学部(文系)・医学部保健学科看護学専攻で, 問題冊子の表紙には「数学〔文系等〕」と刷られる。
ここで注意すべきは,同じ100点でも学部によって重みがまったく違うことである。 個別学力検査の配点は,たとえば法学部は国語650・数学650・外国語650で数学が3分の1を占めるのに対し, 文学部は国語500・数学300・外国語500と数学の比重が小さい。 教育学部は国語650・数学450・外国語650,経済学部(文系)は3教科各300である。 法学部・経済学部の受験生にとって,数学は事実上の主要科目だと考えてよい。
もうひとつ確認しておきたいのは, 東北大学の数学では「数学公式集」が配布されないことである。 公式集を配る大学は名古屋大学などごく一部にかぎられ, 東北大学をふくむ大多数の大学では配られない。 和積の公式も, も, すべて自分の記憶から引き出す必要がある。
| 年度 | 大問1 | 大問2 | 大問3 | 大問4 |
|---|---|---|---|---|
| 2019 | 直線と放物線の交点(解と係数の関係) | 対数の不等式をみたす整数の存在 | 分数型の漸化式(正であることの証明) | 硬貨の入れ替えと確率 |
| 2020 | 場合分けで定めた関数と面積の最大最小 | 整数( と の大小) | 円と2直線の共有点の個数 | 硬貨6枚とベクトル・確率 |
| 2021 | 放物線と 軸の正の部分(領域の図示) | 正八角形と場合の数 | 2円の共通部分の面積 | 3次と2次の共通接線・面積 |
| 2022 | 和が定まった正の奇数の組の個数 | 絶対値つき定積分の最小 | 領域と1次式の最大 | 空間の四面体の体積 |
| 2023 | 玉を取り出すゲームの確率 | 円の2接線・内接円と外接円 | 区間が動く2次関数の最大最小 | 線分の通過領域の面積 |
| 2024 | 放物線・接線・面積 | と方べきの定理 | 対数の不等式と整数 | が定める整数列 |
| 2025 | 硬貨とさいころ・数直線上の確率 | 対数をとって等比数列に帰着 | 四面体とベクトル | 2曲線が囲む2つの面積が等しい条件 |
| 2026 | 放物線の2接線と垂直二等分線 | 整数() | 平面ベクトルと直交条件 | 4次関数と面積比の不等式 |
「まんべんなく」がいちばんの特徴
名大理系が「微積分・確率・整数」の3本柱で毎年ほぼ同じ顔をしているのに対し, 東北大文系はどの分野から出るか読みにくい。 8年32題を分野別に数えると次のようになる(融合問題は延べで数えた)。
「微分・積分は必ず出る。残り3題は全範囲からくじ引き」——これが8年分の結論である。 苦手分野をひとつでも残すと,そこが出た年に25点を失う。 文系数学の範囲は狭い。穴を作らないことが最大の対策になる。
| 分野 | 8年32題中 | 特徴 |
|---|---|---|
| 微分・積分(数学 II) | 8 | 毎年必ず1題以上。面積が主役で,3次・4次関数と接線がからむ |
| 場合の数・確率 | 6 | 出ない年もある(2024)。漸化式より数え上げの工夫が問われる |
| 図形と方程式 | 4 | 円・直線・領域。図示せよが2回 |
| ベクトル(平面・空間) | 4 | 2022以降ほぼ毎年。四面体か三角形の内分点 |
| 整数の性質 | 3 | 「示せ」型が中心。2026は3小問すべてが証明 |
| 図形の性質・三角比 | 3 | 方べきの定理・内接円・外接円といった数学 A の図形 |
| 数列 | 3 | 漸化式を1回の変形で既知の型へ落とす |
| 指数・対数 | 2 | 不等式と整数の融合 |
| 2次関数 | 1 | 区間が動く最大最小(2023) |
小問の並べ方
8年32題の小問は合計82問で,1題あたり平均2.6問。 名大理系(1題4問)より誘導が短い。誘導が短いということは, ひとつの小問で越えるべき段差が大きいということである。
| 型 | 構造と対処 |
|---|---|
| A.小問なしの一発型 | 2019年大問1,2021年大問1,2025年大問4のように,小問がまったくない年がある。 8年で3回。方針を自分で立てるところから採点対象で,答だけ書いても0点。 |
| B.計算計算最大最小 | 最頻出。(1)(2)で具体的な値や式を出させ,最終小問で最大・最小や個数を問う。 最終小問は前小問の式を文字の関数とみて処理する。 |
| C.具体例一般化 | , など具体的な値で数えさせてから一般の へ。 具体例で使った数え方をそのまま一般化できるかが分かれ目。 |
| D.示せ型の連続 | 整数と数列に多い。2026年大問2は3小問すべてが「示せ」。 必要条件で絞ったあとの十分性の確認を書かないと大幅減点。 |
難易度と目標
東北大文系数学は「典型問題が中心。ただし1題だけ重い」という設計である。 標準的な問題集で見たことのある形が並ぶが, 場合分けが多い・計算量が重い・最後に証明が置かれているのいずれかで手が止まる大問が毎年1題ある。 2026年度は文字式の計算量が全体に増え,時間内に4題を仕上げるのが難しかった。
8年82小問のうち「示せ・証明せよ」型はおよそ10問(約12%)。 名大理系の4割に比べれば少ないが,出るときは大問まるごと証明になる(2026年大問2)。 また「図示せよ」が2回出ており,境界を含むか含まないかの明示が採点対象になる。
目標は2完+2半(55〜60点)。 数学の比重が高い法学部・経済学部を狙うなら3完(75点)を目指したい。 4題すべてに手をつけ,各大問の(1)を確実に取るだけで30点前後に届く。 1題に固執して他題の(1)を落とすのが最悪の失敗である。
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