東大理系数学の出題傾向と対策
東京大学・理系・2019〜2026年度の分析
形式は8年間不変
試験時間150分,第1問から第6問までの6題,完全記述式,配点120点。 解答用紙は 2 枚配られ,第1問〜第3問と第4問〜第6問に分けて記入する。 問題冊子には大問と大問のあいだに「計算用紙」のページが挟まれており, 公式集は配布されない。名古屋大学などとはここが決定的に違う。
注意事項には「答えだけを書いた答案には点を与えない」旨が明記されている。 すなわち東大の採点は最初から論証の採点であり,結論を当てにいく戦い方はそもそも成立しない。
| 年度 | 第1問 | 第2問 | 第3問 | 第4問 | 第5問 | 第6問 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2019 | 定積分の計算 | 正方形上の3点と比の最大最小 | 八面体の切り口(図示・面積) | 整数(最大公約数と平方数) | 方程式の解と極限 | 複素数(4次方程式・図示) |
| 2020 | 2次不等式の解集合(論証) | 三角形の面積の和と領域 | 媒介変数曲線・回転の通過領域 | 整数の積の和と整式 | 空間(円錐と線分の通過体積) | 三角方程式の解の個数・楕円 |
| 2021 | 放物線の通過範囲(図示) | 複素整式の像(図示) | 接線と定積分 | 二項係数を4で割った余り | 距離の最大(微分) | 4次式の因数分解と整数 |
| 2022 | 積分を含む関数の最小 | 漸化式と倍数・最大公約数 | 領域と面積の最小 | 3次曲線と面積の2等分 | 空間(中点の通過範囲の体積) | コイン投げとベクトル(確率) |
| 2023 | 定積分の評価と極限 | 玉の並べ方(条件付き確率) | 円と放物線(弦の長さ) | 空間ベクトルと球面 | 整式の割り算 | 立方体の表面と線分(体積) |
| 2024 | 空間の角の条件(図示) | 絶対値つき積分関数の最大最小 | 格子点上の確率(対称移動) | 放物線と共通接線をもつ円 | 空間(回転体の体積) | 3次式が素数となる整数 |
| 2025 | 内分点の描く曲線(面積・長さ) | の不等式と極限 | 平行四辺形に外接する長方形 | 平方数と素数の同値(整数) | 札の並べかえ(漸化式) | 複素数平面( の実部・図示) |
| 2026 | 微分の最大最小と積分の評価 | 格子点3点が三角形(確率) | 球面上の3点・通過範囲(図示) | 3次曲線の接線のなす角と面積 | 複素数平面( の軌跡) | 約数の個数を3で割った余り |
分野の配分は「微積分3分の1・整数・確率・空間・複素数」
8年48題を分野別に数え直すと,東大の設計がはっきり見える。
| 分野 | 48題中 | 特徴 |
|---|---|---|
| 微分積分(面積・体積・極限・評価) | 16 | 毎年2題前後。計算では終わらず必ず極限か不等式へ接続する |
| 空間図形・空間ベクトル | 8 | 毎年1題。切り口を1つの平面で捉える型が圧倒的 |
| 整数 | 7 | 「示せ」型が主。合同式・素因数・約数 |
| 確率・場合の数 | 5 | 2022年以降は毎年出題。数え上げと漸化式 |
| 複素数平面 | 4 | 軌跡・領域の図示に直結する |
| 図形と方程式(領域の図示) | 4 | パラメータ平面に条件を写す |
| 数列・整式 | 2 | 割り算・恒等式 |
| 論証(不等式・解の個数) | 2 | 2020年に集中 |
東大の小問は「4つの型」でできている
| 型 | 構造と対処 |
|---|---|
| A.道具を作らせる型 | (1)で一見どうでもよい不等式や等式を示させ,(2)以降でそのまま使わせる。 2026年第1問,2025年第2問がこれ。(1)を使わずに(2)を解こうとすると必ず詰まる。 |
| B.図示型 | 「の全体を図示せよ」。8年で7回出ている東大の看板。 境界を含むか・除外点・特徴的な座標の3点を書いて初めて満点になる。 |
| C.すべて求めよ・存在を示せ | 整数問題に多い。必要条件で候補を絞り,十分性(実現可能性)の確認を書かないと大幅減点。 |
| D.切り口を1枚とる型 | 空間図形はほぼこれ。どの平面で切るかを決めた瞬間に勝負がつく。 回転体なら回転軸に垂直な平面,通過範囲なら媒介変数を固定する平面。 |
難易度と目標
東大理系数学は「6題のうち1〜2題が易,3題が標準,1〜2題が難」という設計が続いている。 120点満点で,合格者の得点は理科一類・二類でおよそ60〜70点, 理科三類で90点前後といわれる。すなわち半分取れば十分である。
したがって本番の戦略は明快で, 「解ける3題を確実に完答し,残り3題で部分点を積む」に尽きる。 8年間の小問およそ140問のうち約4割が「示せ」「図示せよ」型であり, 答えを出す力より論証を書ききる力が測られる。 1題に固執して他題の(1)を落とすのが最悪の失敗である。
とくに各大問の最終小問は, 「知っている解法を当てはめるだけでは届かない」水準に意図的に引き上げた。 たとえば
といった具合である。手が止まったら,まず(1) に戻って何が与えられたかを読み直すこと。 東大の難問は,例外なく前小問が道具になっている。
| 第1回 5(4) | 粗い評価では「 以上 以下」しか出ない。主要部と誤差に分ける 2 段構えが要る |
|---|---|
| 第2回 4(3) | 中線が弦に垂直という一手から「OA を直径とする球面」に化ける |
| 第3回 1(3) | 実数条件 を落とすと範囲を取り違える |
| 第4回 4(2) | 「赤白の列は順序が違っても同じ確率」に気づけるかで決まる |
| 第4回 5(3) | 「 が存在するか」を判別式と区間の交わりで処理する |
| 第5回 2(3) | 分母が 乗ずつ増えることと,値が有限個しかないことを衝突させる |
| 第5回 5(3) | 本目の円柱で切り口が円と正方形の共通部分に変わる |
この分析からつくった予想問題集
合格答案をつくる シリーズは、2019〜2026年度のこの出題分析をもとに書き下ろした東大理系数学のオリジナル予想問題集です。本番形式の問題に加え、どこで何点入るかを示した採点基準と別解を収録しています。