京大文系数学の出題傾向と対策
京都大学・文系・2019〜2026年度の分析
形式は8年間まったく動いていない
試験時間120分,大問5題,150点満点,完全記述式。 配点は各大問の右肩に「(30 点)」と明示される(配点を公表しない大学が多い中では珍しい)。 理系は150分・6題・200点なので,文系は1題あたり24分と,理系(25分)とほぼ同じ密度である。 問題冊子は表紙のあと2ページに5題が並び,末尾に「問題は,このページで終わりである。」と書かれる。 数学公式集は配布されない(2019年度に常用対数表が付いた例があるのみ)。 句読点は「,」「.」である。
対象学部は総合人間(文系)・文・教育(文系)・法・経済(一般)。 出題範囲は募集要項に 「数学I」「数学II」「数学A」は全範囲,「数学B」は数列,「数学C」はベクトル と明記されている。したがって複素数平面・平面上の曲線・統計的な推測は出ない。 数学IIIの微積分(極限・置換積分・回転体など)も当然範囲外で, 積分は多項式関数のものだけである。
| 年度 | 大問1 | 大問2 | 大問3 | 大問4 | 大問5 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2019 | 整式の割り算/対数と桁数 | 絶対値つき2次関数の最小 | 論理と2次不等式・領域の図示 | さいころと確率 | 球面上の四角錐の体積最大 |
| 2020 | 絶対値つき曲線と面積 | 直交する2次関数 | 整数(16を法とする) | 空間ベクトルと内積 | 場合の数( の配列) |
| 2021 | 記数法/垂心とベクトル | 絶対値つき定積分 | 箱と玉の確率 | 直方体の切断面の面積最小 | 整数() |
| 2022 | 対数の評価 | 立体上の経路と漸化式 | 直交する2接線と面積 | 軌跡(交点の中点) | 空間ベクトル・最小値 |
| 2023 | さいころの積/有理化 | 空間ベクトル(線分の比) | 3倍角と正五角形の評価 | 数列( を含む漸化式) | 整式の積分方程式 |
| 2024 | 四面体の体積 | 立方体の彩色と確率 | 絶対値つき2次関数の最大 | 記数法と桁数 | 領域の面積 |
| 2025 | 対数の等式/整式の整除 | 整式の合成と領域の図示 | 硬貨と整数の確率 | 共通接線と面積 | 空間ベクトル(定点通過) |
| 2026 | 円の接線と放物線の面積 | 正四面体と球面 | 整数(表せない数の個数) | ガウス記号と数列 | 期待値(最大番号) |
「整数・確率・図形・微積」の4本柱
40題を分野で数え直すと,京大文系の設計がはっきり見える。 この4分野で毎年4題が埋まり,残り1題が2次関数・図示・数列・三角関数から選ばれる。
| 分野 | 8年で | 特徴 |
|---|---|---|
| 微分積分(数IIの範囲) | 9 | 面積・接線・最大最小。極限は出ないので,計算は必ず有限で終わる |
| 空間図形・ベクトル | 9 | 四面体・立方体・球面。座標を入れるか内積で押すかの判断が分かれ目 |
| 確率・場合の数 | 8 | 回の試行を の式で表す型が中心。期待値は2026年に復活 |
| 整数(記数法・対数の桁数を含む) | 8 | 「すべて求めよ」「示せ」型。合同式を自分で持ち出す必要がある |
| 2次関数・方程式・領域の図示 | 5 | 2019, 2024, 2025 に集中。図示は8年で3回 |
| 数列 | 2 | 2023, 2026 |
| 三角関数・図形と計量 | 1 | 2023 の正五角形のみ |
8年で30題が「小問なしの一行問題」
これが京大文系最大の特徴である。40題のうち小問がついたのは10題だけで, 残る30題(75%)は誘導なしの一行問題である。しかも小問がつく場合も (1)(2) の2つまでで,3つ以上に分かれた年は8年間で1度もない。 形式は次の2種類しかない。
残る5題のうち4題が (1)(2) 型,1題(第4回の大問1)が問1・問2型である。
| 型 | 8年で | 中身 |
|---|---|---|
| 一行問題 | 30題 | 「〜を求めよ」「〜を示せ」だけ。方針を自分で立てるところが試験そのもの |
| (1)(2) 型 | 6題 | (1) が (2) の道具になる。(1) を落とすと (2) も落ちる |
| 問1・問2 型 | 4題 | 大問1に置かれる独立2問。それぞれ15点相当。取りこぼせない |
難易度の実測——「易しい年」は存在しない
「京大文系は理系より易しい」と言われるが,これは分量と道具立ての話であって, 発想の要求水準は下がらない。実際に40題を,次の4段階の基準で1題ずつ分類した。
易しい問題は8年で2題しかない。平均すると1回あたり 標準2題・やや難2題・難0.8題で, 「まず解ける1題」を探して確保する作業から試験が始まる。 25題あたりに換算した本番(易1.3・標準10・やや難10・難3.8)と比べると, 易しい問題を置かず,やや難と難をそれぞれ本番より多くしてある。 本番と同等以上の負荷になるように,意図してこの配分にした。
| 易 | 解法が一意に決まり,計算も短い。10分程度で完答できる |
|---|---|
| 標準 | 定石の組合せで解けるが,立式か場合分けに一手間かかる。20分程度 |
| やや難 | 方針を自分で選ぶ必要があり,選択を誤ると行き詰まる。または論証・場合分けが重い |
| 難 | 見通しのよい着想が要る,または論証の骨格を自分で組む必要がある。完答率が低い |
| 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026 | 計 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 易 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
| 標準 | 1 | 1 | 2 | 3 | 4 | 0 | 2 | 3 | 16 |
| やや難 | 2 | 3 | 1 | 1 | 1 | 5 | 2 | 1 | 16 |
| 難 | 2 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 6 |
目標点と時間配分
学部により数学の比重は大きく違う。経済学部(一般)は数学150点/二次550点, 法学部は数学150点/二次500点である。合格者の数学の得点はおおむね 60--90点(4割--6割)に集まり,2完+2半で合格圏というのが現実的な線である。
一行問題ばかりなので,「手をつけたが0点」という答案が生まれやすい。 これを防ぐには,方針が立たなくても設定を式に翻訳する・小さい場合を計算する・ 必要条件を1つ出すのいずれかを必ず書くことである。
| 0--10分 | 5題すべてに目を通し,解けそうな順に並べる。ここを省くのが最大の失敗 |
|---|---|
| 10--35分 | 最も自信のある1題を完答 35--60分:2題目を完答 |
| 60--85分 | 3題目。方針が立たなければ25分で切り上げる |
| 85--110分 | 4題目・5題目の部分点を拾う。設定の言いかえ・具体例の計算だけでも書く |
| 110--120分 | 見直し。とくに場合分けの漏れと十分性の確認 |
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