慶應医学部数学の出題傾向と対策
慶應義塾大学・医学部・2019〜2026年度の分析
形式 ── 100分・大問4題・150点・「答のみ」が原則
個別学力試験は英語150・数学150・理科200(物理100・化学100または物理100・生物100など2科目) の計500点で,これに小論文と面接(第2次試験)が加わる。数学は100分・大問4題・150点である。
最大の特徴はほぼ全問が空欄補充であることである。 問題文は「以下の文章の空欄に適切な数または式を入れて文章を完成させなさい」で始まり, 本文中に枠つきの(あ)(い)(う)…が並ぶ。 枠に入れるのは答だけで,途中の過程は採点されない。 そのうえで,ほぼ毎年1問だけ「理由とともに答えなさい」「示しなさい」 「思考過程も書きなさい」といった記述指定の設問が混ざる。
8年でのべ358個の空欄,記述指定は7問である。 注目すべきは空欄の数が近年になって急に増えていることで, 2022年度の30個に対し2026年度は69個——2.3倍である。 直近3年の平均は58個で,100分で割ると1個あたり1分43秒しかない。
これは8年平均の45個とほぼ同じで,直近3年よりはやや少ない。 これは空欄の数ではなく1つあたりの計算量を重い年に合わせたためである。 記述指定の設問は本番と同じく各回1問置いた。
| 年度 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 |
|---|---|---|---|---|
| 空欄の数 | 40 | 35 | 44 | 30 |
| 記述指定の設問 | 1 | 1 | 1 | 0 |
| 年度 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026 |
| 空欄の数 | 36 | 51 | 53 | 69 |
| 記述指定の設問 | 0 | 1 | 2 | 1 |
大問の位置で分野がほぼ決まる
8年分を並べると,設計がはっきり見える。 大問Ⅰは8年すべてが小問集合,大問Ⅱは8年すべてが確率(またはデータの分析)である。 変動するのは大問Ⅲ・Ⅳだけで,ここに微積分・2次曲線・空間図形・複素数平面が入れかわりで置かれる。
32題を1題1分野で数え直すと次のようになる。
| 年度 | 大問Ⅰ | 大問Ⅱ | 大問Ⅲ | 大問Ⅳ |
|---|---|---|---|---|
| 2019 | 小問集合(三角関数・確率・空間ベクトル) | 確率漸化式(四角形の頂点上の点) | 放物線と反転・曲線の長さ | 円の接線・内心・垂心と楕円 |
| 2020 | 小問集合(空間・微積・複素数平面) | 確率( 枚のカードを2人が引く) | 三角関数の恒等式と | 曲線の長さと2つの極限 |
| 2021 | 小問集合(ベクトル・回転体・集合) | データの分析(順位と相関係数) | 2次曲線の分類と焦点 | 懸垂線と円の共通接線 |
| 2022 | 小問集合(絶対値・因数分解・対数・合成) | 確率( 個の玉と条件つき確率) | 回転移動と内サイクロイド・極方程式 | 点と放物線の距離・凸性・曲線の長さ |
| 2023 | 小問集合(中線定理・複素数・接線と面積) | 確率(腕ずもうの得点) | の接線の連鎖と無限級数 | 極座標と内接円・外接円 |
| 2024 | 小問集合(外心内心・楕円の接線・積分) | 確率漸化式(2つの袋の玉) | 分数関数のグラフと広義積分 | 四面体の切り口と六面体 |
| 2025 | 小問集合(正規分布・確率密度・区分求積) | 確率漸化式+確率変数 | 多項式の合成と積分 | 正方形・立方体の反射 |
| 2026 | 小問集合(確率密度・集合と区間・空間) | 確率漸化式+期待値・分散 | 1の7乗根と3次方程式 | 分数関数の極値と面積の極限 |
| 分野 | 32題中 | 特徴 |
|---|---|---|
| 小問集合(大問Ⅰ) | 8 | 8年連続。独立した3〜5問。近年は統計的な推測が必ず入る |
| 確率 | 7 | 大問Ⅱに固定。確率漸化式が4回, の式で答えさせる型が3回 |
| 微積分 | 6 | 大問Ⅲ・Ⅳ。面積・体積で終わらず必ず極限か評価へ接続する |
| 2次曲線・図形と方程式 | 5 | 極方程式・媒介変数・焦点の性質。数学Cが重い |
| 空間図形 | 2 | 2024・2025と2年連続 |
| データの分析/整式/複素数平面 | 各1 | 2021/2025/2026 |
「統計的な推測」は 2025 年度から連続で出ている
新課程で数学Bに入った「統計的な推測」は,慶應医学部では 2025年度・2026年度と2年続けて大問Ⅰの冒頭に置かれた。 2025年度は標準正規分布表が問題文中に与えられ,身長の分布を扱った。 2026年度は連続型確率変数の期待値と分散を, 定義式そのものを問題文に書いたうえで計算させている。 つまり知識ではなく,その場で定義を読んで積分する力を測っている。 第1回は仮説検定,第2回は連続型確率変数(確率密度関数),第3回は二項分布の正規近似, 第4回はデータの分析に続けて母平均の推定,第5回は標本平均と信頼区間である。
難易度 ── 「易しい問題」は8年で1題もない
基準は次のとおりである。
大問Ⅰの小問集合はどの回も,最後の 〜 個の空欄で 統計的な推測・区分求積・ 乗根の有理化といった一段上の処理を要求する形にしてある。 易しい問題は8年で1題もない。「慶應医は計算力の試験だ」という評判は 半分だけ正しい——確かに計算量は多いが, 最後の空欄はほぼ必ず「極限」か「最大最小」か「条件の言いかえ」になっており, そこだけは方針を自分で決める必要がある。
| 易 | 定型の当てはめだけで全空欄が埋まる |
|---|---|
| 標準 | 標準的な入試問題の水準。方針で迷う箇所がない |
| やや難 | 途中までは標準だが,最後の 〜 個の空欄で一段上がる |
| 難 | 発想か計算量のどちらかで大きく差がつく。完答は上位層に限られる |
| 易 | 標準 | やや難 | 難 | 計 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 過去問 2019--2026(32題) | 0 | 5 | 14 | 13 | 32 |
| 1回あたり | 0 | 0.6 | 1.8 | 1.6 | 4 |
| 1回あたり | 0 | 0.4 | 2.0 | 1.6 | 4 |
目標点
第1次試験は500点満点で,例年の合格最低点はおおむね6割前後である (年度により幅がある)。数学だけを取り出せば 150点中90点(6割)で戦える,110点あれば大きな武器になる。 大問Ⅰの小問集合と大問Ⅱの前半は全員が取ってくるので, ここを落とすと挽回がきかない。 逆に大問Ⅲ・Ⅳの最後の 〜 個の空欄は,上位層でも空欄のまま出している。
時間配分の目安は次のとおりである。
| 0--5分 | 4題すべてに目を通し,空欄の数を数えて重い大問を見きわめる |
|---|---|
| 5--28分 | 大問Ⅰ(小問集合)。1問あたり8分。詰まったら飛ばす |
| 28--53分 | 大問Ⅱ(確率)。前半の漸化式までは必ず取る |
| 53--80分 | 大問Ⅲ・Ⅳのうち取りやすい方 |
| 80--95分 | 残りの大問。記述指定の設問は必ず何か書く |
| 95--100分 | 検算。とくに符号と分母の有理化 |
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