慶應経済数学(A方式)の出題傾向と対策
慶應義塾大学・経済学部A方式・2019〜2026年度の分析
2027年度からの変更点――まずここを押さえる
慶應義塾大学経済学部は,2024年12月6日の発表で, 2027年度一般選抜から小論文を休止し,数学と地理歴史の試験時間・配点を拡大する ことを公表した。A方式の試験科目は [ 外国語〔英語〕(100分・200点)+数学(100分・200点) ] の2教科となる。従来(2026年度まで)の数学は80分・150点であったから, 時間が20分,配点が50点増えることになる。
もうひとつ,この学部を語るうえで外せないのが二段階の採点方式である。 同発表には quote A方式は「外国語」の問題の一部と「数学」の問題の一部の合計点が一定の得点に達した受験生について, 「外国語」の残りの問題と「数学」の残りの問題を採点します。 quote とある。実際の問題冊子でも,数学は 1〜3(マークシート)が先に採点され, それが一定点に達した受験生についてのみ 4〜6(記述)が採点される と明記されている。 記述で稼ごうとしてマークを落とすと,その記述は読まれずに終わる—— この一点が,他大学の対策と決定的に違うところである。
出題範囲
一般選抜要項に記された出題範囲は,次のとおりである(原文)。
ここから読み取るべきことが つある。
なお,データの分析(分散・共分散・相関係数)は数学I の内容なので出題範囲に入り, 実際に2022年度・2023年度で問われている。 同じ「分散」でも,数学I のデータの分散は範囲内, 数学B の確率変数の分散は範囲外である点に注意すること。
| (i) 数学III はない | 数学III が挙がっていないので,極限,無限級数,微分方程式, 分数関数・無理関数,置換積分・部分積分,体積の定積分は出題されない。 数学C も「ベクトル」だけなので, 2次曲線(放物線・楕円・双曲線)と複素数平面も出題されない。 数学B も「数列」だけなので, 統計的な推測(確率変数の分散,正規分布,母平均の推定)も出題されない。 |
|---|---|
| (ii) 数学A は全部 | 医学部が「図形の性質」「場合の数と確率」と単元を絞っているのに対し, 経済学部は数学A に単元の指定がない。 「図形の性質」「場合の数と確率」に加えて 「数学と人間の活動」(約数と倍数,互除法,記数法などの整数)も範囲であり, 実際に整数はほぼ毎年出ている。 なお期待値は新課程で数学A に移ったので出題される。 |
| (iii) 多項式の次数に制限がない | 「一般の多項式を扱う」という但し書きは経済学部だけのものである。 数学II の教科書は 次程度までしか扱わないが, 次・ 次の関数の微分・積分が出ても文句は言えない。 |
大問の構成は8年間ほぼ不変
この表から読み取れることは3つある。
| 年度 | [1] | [2] | [3] | [4] | [5] | [6] |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2019 | 円と三角比 | 確率(球) | 数列(漸化式) | 指数・対数 | 空間ベクトル | 微積分 |
| 2020 | 整数 | 確率(さいころ) | 数列・桁数 | 空間図形 | 対数と三角関数 | 微積分 |
| 2021 | 図形と方程式 | 確率(条件付き) | 数列( の式) | 対数・桁数 | 空間ベクトル | 微積分 |
| 2022 | 図形の性質 | 数列(絶対値) | データの分析 | 空間ベクトル | 指数・対数 | 微積分 |
| 2023 | 三角比・整数 | 数列(部分分数) | 確率・分散 | 対数 | 空間ベクトル | 微積分 |
| 2024 | 整数・三角関数 | 確率(カード) | 指数関数と数列 | 空間ベクトル | 対数(ガウス記号) | 微積分 |
| 2025 | 三角比・整数 | 数列(部分分数) | 確率(点の移動) | 接線・対数 | 空間図形 | 微積分 |
| 2026 | 対称式・円 | 数列(連立漸化式) | 確率(期待値) | 対数 | 空間ベクトル | 微積分 |
| (i) 6分野が固定 | 微積分・空間(ベクトル)・指数対数・数列・確率の5分野が8年連続で毎年1題ずつ出ており, 残る1題が 1 の小問集合(図形と計量/整数/式と証明/データの分析)である。 分野を絞る対策が最も効く大学のひとつである。 |
|---|---|
| (ii) 位置もほぼ固定 | 6 は8年連続で微積分。45 は 指数対数と空間図形が1題ずつ(順序は年による)。 23 は数列と確率が1題ずつ(同上)。 開いた瞬間に何が出るかがほぼ分かるという,きわめて珍しい入試である。 |
| (iii) 融合が標準 | 「数列+桁数(対数)」「確率+整数」「確率+データの分析」「接線+対数+整数」のように, 2分野を継ぎ目なくつなぐのが定番。単元別問題集だけでは対応しきれない。 |
前半(マーク)と後半(記述)の性格の違い
| 1〜3 | 解答用紙A(マークシート)。空欄はおよそ55〜60個。 1つの空欄は 〜 の数字かマイナス符号ひとつに対応し, 分数は分母を正にして約分しきった形で答える。 誘導が細かく刻まれているので, 途中の空欄が埋まるかどうかで自分の進路が正しいか検算できる—— これがマーク式の最大の利点である。 |
|---|---|
| 4〜6 | 解答用紙B(記述)。1題あたり小問3〜4個。 「求めよ」だけでなく「示せ」「必要十分条件を求めよ」「図示せよ」 「積分の計算過程も書くこと」といった記述そのものを要求する指示が混じる。 答えだけを書いた答案には点が与えられない。 |
難易度と目標
「超難問は出ないが分量が多く,計算が重い」というのがこの学部の設計である。 発想の飛躍を要する問題はほとんどなく, 標準的な手法を正確に,速く,最後まで走らせる力が測られる。 とくに前半のマーク3題は,1つの空欄を落とすと以降が連鎖的に崩れる作りになっており, 計算の正確さがそのまま得点に直結する。
目標は次のとおりである。
合計 点前後が一つの目安になる。 記述の最終小問に 分かけてマークの見直しを捨てるのは,この学部では自殺行為である。 二段階採点の存在を,最後まで忘れないでほしい。
| マーク3題(100点) | 記述3題(100点) | |
|---|---|---|
| まず超えたい線 | 70点 | 40点 |
| 合格圏の目安 | 75〜85点 | 45〜55点 |
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