北大文系数学の出題傾向と対策
北海道大学・文系・2019〜2026年度の分析
形式は8年間ほとんど変わっていない
試験時間90分(9:00--10:30),大問4題,完全記述式。 配点は150点で,個別学力検査は国語150+外国語150+(地理歴史または数学)150の 計450点,これに大学入学共通テスト315点を加えた765点で合否が決まる。 教育学部・法学部・経済学部・医学部保健学科(看護学専攻・作業療法学専攻)では 数学は必須であり,地理歴史との選択が認められるのは総合入試(文系)と文学部だけである。
問題冊子は3ページ——表紙(注意事項)+問題2ページで, 1ページに大問2題が組まれる。解答用紙は大問ごとに1枚の計4枚で, 裏面は使用できない。表紙には「注意」9項目のほかに 「解答上の注意」という枠がもう一つあり,そこに 「採点時には,結果を導く過程を重視するので,必要な計算・論証・説明などを 省かずに解答せよ」と明記されている。
なお数学公式集は配布されない(名古屋大学などとはここが違う)。 三角関数の合成,和と積の公式, の公式などはすべて自分で用意しておく必要がある。
8年32題の一覧
| 年度 | 問1 | 問2 | 問3 | 問4 |
|---|---|---|---|---|
| 2019 | 空間ベクトル(平面への垂線の足と三角形の内部) | 図形と計量(2直線のなす角の最大) | 数列(1と2からなる有限数列の個数) | 微積分(3次関数と導関数の等式・3実解) |
| 2020 | 図形と方程式(放物線・垂直二等分線・中点) | 三角関数(置換と最大最小・解の個数) | 確率(さいころ 回と最大公約数) | 微積分(2放物線の共通接線と面積) |
| 2021 | 数列(和 から一般項・部分分数) | 平面ベクトル(垂線の足と対称点) | 三角関数(置換と方程式の解) | 微積分(2つの面積の差の最大) |
| 2022 | 整式・微積分(3次不等式を解く) | 数列(項と和がともに最小となる ) | 図形の性質(直角三角形の内接円) | 確率(カードと条件つき確率) |
| 2023 | 整式( の決定) | 平面ベクトル(角の二等分線と外角) | 確率(さいころ 回と和の最小) | 図形と方程式・微積分(円と放物線の共通接線) |
| 2024 | 場合の数(約数の個数と総和) | 数列( を含む漸化式) | 微積分(3次曲線と直線・面積) | 確率(正八面体のさいころと持ち点) |
| 2025 | 微積分(極値と,点を通る接線) | 場合の数・図形( と三角形) | 数列(3項間漸化式と ) | 関数方程式() |
| 2026 | 微積分(3次関数と絶対値つき定積分) | 数列(分数の形の漸化式) | 空間ベクトル(平面上の点と四面体の体積) | 確率(さいころと持ち点の積) |
「微積分・数列・確率」の3本柱
分野で数え直すと,北大文系の設計がはっきり見える。 この3分野だけで32題中21題(約66%)を占める。
位置と分野の対応はゆるい。問1に微積分が来る年(2022, 2025, 2026)もあれば 問4に来る年(2019--2021)もある。ただし問4は微積分か確率であることが8年中7年で, 最後の1題を見て「重い計算か,重い数え上げか」を見きわめる目は必要である。
| 分野 | 8年32題中 | 特徴 |
|---|---|---|
| 微積分(3次関数・面積) | 8 | 毎年1題。すべて整式で,極限は一度も出ていない |
| 確率・場合の数 | 7 | 出ない年は2021のみ。「 回の試行」型が半数 |
| 数列 | 6 | 出ない年は2020と2023の2回だけ |
| ベクトル(平面・空間) | 4 | 平面2・空間2でちょうど半々 |
| 三角関数 | 2 | 2020と2021に集中。置換で2次関数に直す型 |
| 図形の性質・図形と計量 | 2 | 2019, 2022 |
| 図形と方程式 | 1 | 2020 |
| 整式・関数方程式 | 2 | 2023, 2025。論証中心で難度が高い |
小問は2〜3問。誘導は素直だが薄い
8年32題の小問はのべ80問で,1題あたり平均2.5問である。 内訳は2小問が18題・3小問が12題・4小問が2題で,小問のない大問は8年間で1つもない。
誘導は素直で,(1) は確実に取れる。しかし(1)から(3)までの落差が大きいのが 北大文系の特徴で,(1) が計算問題,(3) が場合分けや数え上げの本番,という配分が多い。 また「示せ」型は80問中わずか4問(5%),「図示せよ」は8年で0問である。 つまり問われるのはほぼ全部「値・範囲・個数を確定させる力」であり, 論証の作法より計算を最後まで走らせる正確さと場合分けの境目が効く。
難易度の実測——「文系だから易しい」は誤り
32題を4段階で分類すると次のようになる。
易しい問題は8年で1題もない。とくに2023年度(整式の恒等式, さいころ 回の和の最小)と2025年度(3項間漸化式,関数方程式)は難が2題ずつ入り, その年の平均点を大きく下げたと考えられる。
北海道大学は合格者の科目別得点を公表していない。 90分で4題だから1題あたり平均22分しかなく, 手をつける順番を誤ると2題しか書けずに終わる。
| 題数 | 1回あたり | 内容の目安 | |
|---|---|---|---|
| 易 | 0 | 0 | 該当なし |
| 標準 | 11 | 1.4 | 教科書の例題の組み合わせで解ける |
| やや難 | 17 | 2.1 | 場合分けや数え上げの設計を自分で決める |
| 難 | 4 | 0.5 | 発想か,長い論証・計算を要する |
【重要】2027年度から出題範囲が変わる
北海道大学は,2027年度(令和9年度)入学者選抜から 数学(文系)の出題範囲に数学 B「統計的な推測」を加えると公表している。 2026年度までの範囲と並べると次のとおりである。
注意すべき点を3つ挙げる。
(a) 追加されるのは「統計的な推測」だけである。 数学 A の「数学と人間の活動」(整数の性質・記数法など)は 2027年度も範囲外のままであり,合同式や約数・倍数を主題にした 本格的な整数問題は出せない。2024年度の「約数の個数と総和」は旧課程での出題である。
(b) 数学 III は範囲外である。したがって 極限・ や の微分・置換積分・回転体・複素数平面はすべて使えない。 微積分は整式に限られるので,出るのは3次関数のグラフ・接線・面積である。
(c) 「統計的な推測」が初年度から出るとは限らない。 しかし出たときに手が出ないと1題まるごと落とすことになり, 150点満点で37点前後の損失になる。 確率変数の期待値と分散,二項分布,正規分布による近似,母比率の推定という 出題されうる中心部分を1題に収めてある。
| 2026年度まで | 数学 I,数学 II,数学 A(図形の性質,場合の数と確率), 数学 B(数列),数学 C(ベクトル) |
|---|---|
| 2027年度から | 数学 I,数学 II,数学 A(図形の性質,場合の数と確率), 数学 B(数列,統計的な推測),数学 C(ベクトル) |
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