熊本大医学部数学の出題傾向と対策
熊本大学・医学部医学科
形式は8年間ほぼ不変
試験時間120分,大問4題,完全記述式。出題範囲は 数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B・Cである。解答紙は大問ごとに1枚で, 問題冊子には「裏面は採点の対象としません」と明記されている。 数学公式集は配付されない。名古屋大学のように公式集が配られる大学とは違い, 和積の公式も回転体の体積の式も,すべて自分の頭から出さなければならない。
配点は非公表である。医学科の個別学力検査は 数学200点・英語200点・理科200点・面接200点の計800点, これに大学入学共通テスト500点が加わる。
| 年度 | 大問1 | 大問2 | 大問3 | 大問4 |
|---|---|---|---|---|
| 2019 | 2曲線の共有点と回転体の体積 | 直交2直線の交点の軌跡・三角形の面積 | 原点を通る接線と面積 | 球の取り出しとゲームに勝つ確率 |
| 2020 | 媒介変数表示の曲線・接線・面積 | 複素数平面と三角形の面積 | 平方剰余() | 格子点の個数の評価と極限 |
| 2021 | 空間ベクトル(平面と直線の交点の軌跡) | 複素数平面・正三角形 | 媒介変数表示の曲線・面積・回転体 | 絶対値つき定積分と極限 |
| 2022 | 空間の重心・四角形の面積・四角錐の体積 | の最大と | の接線と | 二項係数を含む不定方程式 |
| 2023 | さいころの目の積が60になる確率 | 平面ベクトルと外接円 | 点の軌跡と面積 | 2円の直交・軌跡・ただ1つ存在 |
| 2024 | 袋の選択と条件つき確率・極限 | 三角形の辺と角() | 三角関数の方程式の解の個数と定積分 | と平方数 |
| 2025 | 4点の距離の2乗の不等式・面積 | 複素数平面(垂直二等分線・回転) | 四面体の回転体の体積 | の評価と極限 |
| 2026 | 数列(偶奇で場合分け)と和 | くじ引きの確率・常用対数・極限 | 四面体と垂線の足・外接円 | と自然数の組の個数・極限 |
「微分積分」を軸に,どの分野からも出る
8年32題を分野別に数え直すと,熊本大医学科の設計がはっきり見える。 微分積分(数学Ⅲ)が全体の3分の1を占め,残りを空間図形・確率・複素数平面・整数が分け合う。
| 分野 | 8年中 | 特徴 |
|---|---|---|
| 微分積分(極限・面積・体積・評価) | 11 | 毎年1〜2題。計算では終わらず必ず極限か不等式へ接続する |
| 図形(平面・空間のベクトル) | 5 | 垂線の足・体積・外接円という3点セットが繰り返される |
| 確率 | 4 | や を含む一般形を作らせ,最後に極限か対数評価 |
| 複素数平面 | 3 | 2020, 2021, 2025 |
| 整数 | 3 | 2020, 2022, 2024。新課程後の2025・2026は純粋な整数題が出ていない |
| 数列・図形と方程式・三角比 | 6 | 単独でも出るが,他分野の中に埋め込まれることが多い |
小問の並べ方は3通りしかない
熊本大医学科の大問は,ほぼ例外なく(問1)(問2)(問3)の3段構えである (まれに2問,2025年度の大問3のように小問なしの年もある)。 その3段の付け方には,次の3つの型しかない。
| 型 | 構造と対処 |
|---|---|
| A.具体例一般化極限 | (問1)で小さい や特別な値を計算,(問2)で を含む一般形,(問3)で極限か評価。 確率・数列の大問はほぼこれ。(問1)を落とすと以降の誘導がすべて死ぬ。 |
| B.道具を作らせてから使わせる | (問1)で一見どうでもよい等式・不等式を証明させ,(問2)(問3)で道具として使わせる。 2025年度の大問4(接線と定積分の不等式)が典型。 |
| C.図形量を1変数に落とす | (問1)で位置ベクトルや長さを文字で表し,(問2)で面積・体積を1文字の関数にし, (問3)で最大最小。空間図形の大問はほぼこれ。 |
(問3)で何が要求されているか
熊本大医学科は「奇問は出ないが,最後まで走り切らせない」という設計である。 (問1)(問2)は教科書+標準問題集の範囲で,ここは全員が取る。 差がつくのは(問3)で,そこには必ず極限・不等式の評価・場合分けの完全性のいずれかが仕込まれている。
過去8年の(問3)(小問が2つの年は最終小問)を「答えを出すために必要な追加の一手」で 分類すると,次のようになる。
つまり熊本大の(問3)は,「(2) の答をそのまま代入すれば出る」ようには作られていない。 かならずもう一手——不等式を自分で用意する,前小問を別の形で使い直す,場合を尽くす——が要る。 第5回のみ,仕上げとして本番よりやや上に置いてある。
| (問3)で要求される一手 | 8年中 | 代表例 |
|---|---|---|
| 自分で不等式を作ってはさみうち | 9 | 2020④(),2022②(), 2022③(),2025④,2026④ |
| 前小問の結果を道具として使い直す | 7 | 2019④,2023④(ただ1つ存在),2024④,2025①,2026② |
| 場合分けを尽くす(個数・条件) | 5 | 2021①,2024①(最大を与える ),2024③,2024④ |
| 重い計算をやり切る | 4 | 2019①,2021③,2025③(小問なしの回転体) |
目標
目標は2完+2半(130点前後)である。 合格者の得点開示を見るかぎり,数学で満点近くを取る受験生はほとんどいない。 4題すべてに手をつけ,各大問の(問1)(問2)を確実に取るだけで120点に届く。 1題に固執して他題の(問1)を落とすのが最悪の失敗であるのは本番と同じである。
なお,熊本大医学科は面接が200点と数学と同じ配点である。 数学で20点差をつけられても取り返せる科目ではないので, 数学は「取れる問題を落とさない」ことがすべてになる。
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