「等加速度運動の公式 が3つもあって、どれを使えばいいかわからない」── 高校物理の力学で最初につまずくのが、ここです。多くの参考書は「3つを暗記しよう」と書きますが、本当は v-tグラフの面積=変位 という1つの原理から、3公式すべてを自分の手で導けます。導出を一度通れば、覚え方を忘れても、条件が変わっても解けるようになります。
この記事の結論
- 等加速度運動の公式は3本だが、出発点はv-tグラフ1つで足りる
- は傾き、 は台形面積、 は時間消去で導ける
- 問題に応じて使う公式を即決するには「既知量×未知量」の早見表が最短
等加速度運動の公式 3つを最初に整理する
まず結論から。等加速度運動の公式 は次の3本です。文字の意味は「初速 、加速度 、時刻 、位置 ( のとき )、その時刻の速度 」。
3つの式は 独立に存在するのではなく、1つの v-tグラフから派生した3つの読み方 です。何が「変数」で何が「結果」なのかを表に整理すると、関係が一気に見えてきます。
| 公式 | 役割 | 含まれる量 | 含まれない量 |
|---|---|---|---|
| 時刻 における速度 | 位置 | ||
| 時刻 までの変位 | 終速度 | ||
| 時間を介さない関係 | 時間 |
v-tグラフの面積=変位 という1つの原理
3公式すべての出発点は、v-tグラフ(速度-時間グラフ)の面積が、その時間に進んだ距離(変位)に等しい という事実です。これは等加速度に限らず、すべての1次元運動で成り立ちます。
これさえ押さえれば、あとは v-tグラフを描いて読む だけで3公式は自然に出てきます。
等加速度運動の公式 v=v₀+at の導出|傾きが加速度
加速度 の定義は「単位時間あたりの速度の変化」。式で書けば:
両辺に をかけて を移項すれば、いきなり1つ目の公式が出ます。
数値で確かめる
たとえば 、 のとき、各時刻の速度は表の通り単調に ずつ増えます。
| 時刻 [s] | 速度 [m/s] | 1秒間の増分 |
|---|---|---|
| 0 | 2 | — |
| 1 | 5 | 3 |
| 2 | 8 | 3 |
| 3 | 11 | 3 |
| 4 | 14 | 3 |
「 ずつ増える」── これが加速度 の意味そのものです。
x=v₀t+½at² の導出|v-tグラフの台形面積
次に変位 。等加速度運動の v-tグラフは 直線 なので、 から までの面積は 台形 になります。台形の面積は「(上底 + 下底) × 高さ ÷ 2」。
- 下底 = 初速
- 上底 = 終速
- 高さ = 時間
これを公式に当てはめて:
展開すれば、
「等速部分」と「加速部分」の分解
| 区分 | 式の項 | グラフ上の図形 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 等速で進む距離 | 長方形 | 加速がなければ届いた距離 | |
| 加速で増える距離 | 三角形 | 加速によって追加された距離 | |
| 合計(変位) | 台形 | 実際に進んだ距離 |
v²-v₀²=2ax の導出|時間tを消去する
3つ目の公式は、時間 が出てこない のが最大の特徴です。「初速・終速・加速度・距離」だけが関係する場面で、時間を測れない/測りたくないときに大活躍します。
導出は単純で、 から を取り出して、 に代入する だけです。
を について解くと:
これを変位の式に代入:
第2項を整理すると 。通分して:
分子は なので、
等加速度運動の公式 覚え方より「使い分け」を覚える
3公式が導けても、本番では「いまどれを使うか」を即決できる必要があります。覚え方を覚える のではなく、既知量と未知量の組み合わせから公式を選ぶ早見表 を頭に入れてください。
| 既知 | 未知 | 使う公式 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 時刻 から速度を出す | |||
| 時刻 から変位を出す | |||
| 時間を介さず速度を出す | |||
| 速度差を加速度で割る | |||
| 時間を消した距離関係 | |||
| 台形面積(上の3公式の派生) |
覚え方アプローチ(非推奨)
3公式と語呂合わせをそのまま暗記。条件が変わると即座に詰まる。
導き方アプローチ(推奨)
v-tグラフ → 傾き/面積/時間消去 で派生。問題条件が変わっても式を再構成できる。
例題3問で確かめる|自由落下・斜面・ブレーキ
3公式の使い分けを、典型的な3場面で確認します。先に「既知量・未知量」を書き出して、表から公式を選ぶ のがコツです。
- 01
例題1|自由落下:3秒後の速さと落下距離
初速 v₀=0、加速度 、t=3s。既知が v₀,a,t、未知が v と x。v=v₀+at から v=29.4 m/s。から x=½·9.8·9=44.1 m。
- 02
例題2|斜面:摩擦なしで5m滑り降りた後の速さ
斜面方向の加速度 a=g sinθ(θ=30°なら a≈4.9 m/s^2)、初速 v₀=0、x=5m。既知が v₀,a,x、未知が v。時間が出てこないので v^2-v₀^2=2ax。。
- 03
例題3|ブレーキ:時速72kmで走行中、減速度2m/s²で止まるまでの距離
v₀=20 m/s、v=0、。既知が v₀,v,a、未知が x。時間より距離を直接出したいので v^2-v₀^2=2ax。x=(0-400)/(2·(-2))=100 m。
等加速度運動の公式を「自分の道具」にする学習ステップ
ここまでで導出は終わりです。最後に、この記事の内容を 一過性の理解で終わらせない ための復習ステップを置いておきます。
- 01
Step 1|白紙にv-tグラフを描いて3公式を再導出する
教科書も参考書も閉じて、横軸 t・縦軸 v の直線だけから、傾き・台形面積・時間消去の3手順で3公式を自分の手で出す。これを週に1回繰り返すだけで定着します。
- 02
Step 2|既知量×未知量の早見表を白紙に再現する
本記事の早見表を、何も見ずに紙に書けるか試す。書けなければ、書けるようになるまで戻る。これが本番での即決力に直結します。
- 03
Step 3|模試・過去問を「公式選択の練習」として使う
問題を解く前に「既知量・未知量・使う公式」だけを15秒で書き出す。この前作業を入れるだけで、計算ミスと公式選択ミスが激減します。
よくある質問(FAQ)
等加速度運動の公式は本当に3つだけ覚えればいいですか?
はい、本記事の3つで等加速度運動はすべて解けます。台形面積から派生する x=½(v₀+v)t も便利ですが、これは v=v₀+at と の組み合わせで導けるため、独立に覚える必要はありません。
加速度の符号はどう決めればいいですか?
最初に「正の向き」を1つ決めます。たとえばブレーキ問題なら『進行方向を正』と決めれば、減速度は と負になります。自由落下なら『下向きを正』に決めれば a=+g、上向き投射なら a=-g。符号の取り違えは大半が「正の向きを決めずに計算を始めた」ことが原因です。
等加速度運動の公式は微積で導けば何が違うんですか?
微積を使うと、加速度が一定でない場合(変化する加速度)にも自然に拡張できます。等加速度では a=dv/dt を積分して v=v₀+at、さらに v=dx/dt を積分して が出ます。本質は同じですが、グラフの傾き・面積で読む方が、高校段階では直感が育ちやすいです。
v²-v₀²=2ax はなぜ「2」がつくのですか?
導出の最後で (v-v₀)(v+v₀)/(2a) を整理した結果、分母の2が残るためです。物理的には『加速度 a で進んだ距離 x のあいだに、速度の2乗が 2ax だけ変わる』── つまり運動エネルギーの式 ½mv²-½mv₀²=max(仕事=エネルギー変化)と同じことを言っています。
等加速度運動の問題でいちばん多いミスは何ですか?
圧倒的に『公式選択ミス』と『符号ミス』です。本記事の早見表を白紙に再現できる状態にしておけば、公式選択は秒で終わります。符号は、解き始める前に必ず『正の向き』を1つ決める習慣で防げます。



